スティーブ・ジョブズも実践|世界の経営者が禅に学ぶ理由

スティーブ・ジョブズも実践|世界の経営者が禅に学ぶ理由

こんな興味はありませんか?

  • 「なぜ世界のトップ経営者は禅に惹かれるの?」
  • 「禅をビジネスに活かすにはどうすればいい?」
  • 「忙しい毎日に効く考え方が知りたい」

スティーブ・ジョブズをはじめ、世界のトップ経営者の多くが禅を生活に取り入れています。なぜ最先端のビジネスパーソンが、千年以上前の東洋の教えに学ぶのか。

この記事では、その理由を解説します。そして最後に、あまり書かれない話も正直に書きます。「禅をやれば人格者になれる」わけではない——ジョブズ本人が、そのいちばんの証拠です。

ジョブズと禅の、思った以上に深い関係

生涯の師は、新潟県出身の禅僧でした

ジョブズが「生涯の師」と仰いだのは、乙川弘文(おとがわ こうぶん/1938〜2002)という日本人の禅僧です。

  • 新潟県出身の曹洞宗の僧侶
  • 福井県の永平寺で修行
  • 1967年、鈴木俊隆の招きでアメリカへ渡る
  • ジョブズが創業したNeXT社の宗教顧問を務めた
  • 1991年、ジョブズとローリーン・パウエルの結婚式を司った

「若い頃に少しかじった」という関係ではありません。会社の顧問を任せ、結婚式まで頼んでいるのですから、生活の中に入り込んでいた存在です。

【重要】Appleが存在しているのは、この人が止めたからかもしれません

ここがいちばん驚いた話です。

若い頃のジョブズは、「日本で僧侶になりたい」と本気で考えていました。そのジョブズに向かって、乙川はこう諭したと伝えられています。

「僧侶になるより、起業家として生きるほうが、自分の命を活かせる」

——もしこの一言がなければ、ジョブズは日本の寺にいたかもしれない。iPhoneもMacも、無かったかもしれないということです。

そして面白いのは、禅僧が「寺に来なさい」ではなく「仕事をしなさい」と言ったという点。これは 作務(さむ) の考え方——日々の労働こそが修行である——そのものです。

アメリカに禅を持ち込んだ「2人の鈴木」

乙川を招いた鈴木俊隆(1905〜71)は、アメリカで最初の本格的な禅道場を設立した人物です。

アメリカに禅を持ち込んだのは「2人のSUZUKI」と言われます。鈴木大拙(1870〜1966)と、この鈴木俊隆。前者が本や講義で禅を紹介し、後者が実際に座る場所を作りました。

ジョブズが禅に触れられたのは、その流れが1960年代のカリフォルニアにすでに届いていたからです。偶然ではなく、下地がありました。

片づいた机に湯呑みをひとつだけ残した禅ちゃん

世界の経営者が禅から学んでいる3つのこと

1. シンプルにする力

禅は「足す」ではなく「引く」思想です。経営でも、本当に大切なものを見極めて、それ以外を削ぎ落とす判断力が求められます。

ジョブズの有名な言葉があります。

「Focus is about saying no.(集中とは、断ることだ)」

これは1997年のWWDC(開発者会議)で、聴衆からの質問に答える中で語られたものです。しかも「OpenDocという製品を打ち切った」という、実際に何かを殺した判断について説明する流れで出てきました。

きれいな標語ではなく、恨まれる決定をした直後の言葉だったわけです。「引く」というのは、そういう痛みを伴います。

2. 今に集中する力

過去の失敗を引きずらず、未来の不安に振り回されない。「今、目の前のこと」に全エネルギーを注ぐ。この集中力が、優れた意思決定を生みます。

「今ここ」を扱うという点では、ビジネス研修で広まった マインドフルネス も同じ根を持っています。

3. 直感を信じる力

禅は、論理ではたどり着けない“直観”を大切にします。膨大なデータの中で、最後に決断を下すのは磨かれた直感です。

ジョブズは2005年6月12日、スタンフォード大学の卒業式でこう語りました。

「Have the courage to follow your heart and intuition.(心と直感に従う勇気を持て)」

同じスピーチの締めが、有名な「Stay hungry, stay foolish.」です。

禅を取り入れている世界のトップたち

  • スティーブ・ジョブズ(Apple創業者):乙川弘文に師事。座禅と日本の禅文化を生涯愛した
  • マーク・ベニオフ(Salesforce CEO):マインドフルネスを企業文化に取り入れた
  • ジェフ・ワイナー(元LinkedIn CEO):毎日、瞑想の時間を確保していることで知られる
  • 稲盛和夫(京セラ創業者):1997年9月7日、京都・八幡の円福寺で得度。法名は「大和(だいわ)」。臨済宗妙心寺派の西片擔雪老師のもとでした

稲盛氏の得度は65歳のときです。京セラを一代で築き上げたあとに、あらためて修行に入っている。「成功したから引退して悠々自適」ではないところに、この人の姿勢が出ています。

共通しているのは、忙しい立場にある人ほど「静かに自分と向き合う時間」を大切にしているということです。

ボードの付箋をはがして減らす禅ちゃん

⚠️ 正直に書きます|「禅をやれば人格者になる」わけではありません

ここは、この記事でどうしても書いておきたかったところです。

ジョブズは、穏やかな人ではありませんでした

禅を実践していたジョブズですが、人当たりの良い人物として知られていたわけではありません。

公式の伝記を書いたウォルター・アイザックソンは、ジョブズをこう評しています。

「上司としても人間としてもモデルになるような人物ではない」

伝記には、出会った人を必要もなく侮辱し、ナイフのように人の心を傷つけたエピソードがいくつも記録されています。100人以上への取材で作られた、決定版とされる評伝での評価です。

つまり——禅を長年やっていても、人格が丸くなるとは限らない。ここをぼかして「禅を学べば人間が磨かれます」と書くのは、事実に反します。

そもそも「ビジネスに効くから禅」は、禅と矛盾しています

もう一つ、根本的な話を。

禅には「只管打坐(しかんたざ)」——ただひたすら座る、という考え方があります。何かを得るために座るのではなく、座ること自体が目的だという意味です。

ということは、「成果を上げるために禅をやる」という発想は、禅が言っていることと正面から反対なのです。

この記事のタイトルそのものが、実は禅的ではありません。それを承知で書いています。

では、意味がないのか

そうは思いません。使い方の問題だと考えています。

  • 「禅を道具として使う」なら、それは禅ではなくマインドフルネスです。効果を求めるなら、最初からそう名乗っているほうを使えばいい。研究の裏付けもあります
  • 禅のほうは、成果と結びつけずに触れる。座る時間そのものを、目的にする
  • ジョブズが乙川から受け取ったのも、たぶん「経営に効くテクニック」ではなかったはずです。「僧侶より起業家として生きろ」と言われた人ですから

禅語の 「放下著(ほうげじゃく)」 に、こんな続きがあります。「下ろせないなら、担いでいけ」。手放せない自分を責めなくていい、という言葉です。成果を求めてしまう自分も、たぶんそれでいいのだと思います。

ビジネスパーソンが今日からできる禅習慣

1. 朝5分の呼吸法

出社前やパソコンを開く前に、目を閉じて深呼吸を5分。1日のスタートが驚くほど整います。3回でも構いません。

2. ToDoリストを「削る」

「やること」を増やすより、「やらないこと」を決める。これが“Focus is about saying no” の実装です。

コツは減らす数を先に決めること。「今日は3つ消す」と決めてからリストを見る。残すものを選ぶより、捨てるものを選ぶほうが早く決まります。

3. 会議と会議のあいだに、一呼吸だけ置く

予定が詰まっている日ほど効きます。次の部屋に入る前に、立ち止まって一度だけ深く吐く。10秒で終わります。前の会議の感情を持ち込まないための切り替えです。

4. 集中タイムに禅BGMを流す

深く考えたい時間に、静かな音を小さく流す。ただし文章を書く・読む作業では、無音のほうが良い場合があります。使い分けは 作業・勉強・睡眠に!禅の瞑想BGMがおすすめな理由 にまとめました。

よくある質問

禅を学べば、判断力は上がりますか?

直接には上がりません。ただ、焦っているときに決めないという習慣はつきます。判断力そのものより、判断するタイミングが変わるという言い方が正確だと思います。

座禅をしないと意味がないですか?

そんなことはありません。日々の仕事を丁寧にやること自体が作務という修行です。乙川がジョブズに言ったのも、まさにそれでした。

宗教として入る必要はありますか?

ありません。稲盛氏のように得度する人もいますが、それは例外です。禅そのものについては 【初心者向け】禅とは何か をどうぞ。

まとめ

  • ジョブズの師は新潟県出身の禅僧・乙川弘文。NeXTの宗教顧問を務め、1991年の結婚式まで司った
  • 「日本で僧侶になりたい」というジョブズを止めたのも乙川。「僧侶より起業家として生きるほうが命を活かせる」
  • 「Focus is about saying no」は1997年WWDC、製品を打ち切った判断を説明する中での言葉
  • 稲盛和夫は65歳・1997年に得度(法名「大和」)
  • ⚠️ 禅をやっても人格者になるとは限りません。ジョブズは伝記で「モデルになるような人物ではない」と評されています
  • ⚠️ 「成果のために禅をやる」は、禅の考え方と矛盾します。効果がほしいならマインドフルネスのほうが素直です

それでも、忙しい人ほど静かに自分と向き合う時間を持っている、というのは事実です。

明日、ToDoリストから1つだけ消してみてください。増やさずに減らす——それが今日からできる、いちばん短い「引き算」です。

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