2026年10月15日、私のスマホに、こんなメールが2通届きました。
- 「【重要】不正アクセスによるお客様情報漏洩に関するお詫びとお知らせ」
- 「当社サイトへの不正アクセスによるお客様情報流出のお詫びとパスワード再設定のお願い」
同じ日に、別々の会社から2通です。どちらも、その会社に登録していた私の情報が、外に出てしまったかもしれない、というお知らせでした。
個人情報の流出は、もうニュースの中だけの話ではありません。今回は、こういうメールが届いたときにやること、そして一番の対策は「パスワードの使い回しをやめること」だという話を書きます。私が実際に使っている1Password(ワンパスワード)というパスワード管理アプリのことも紹介します。
※私はセキュリティの専門家ではありません。この記事は、警察庁・総務省・東京商工リサーチの公表資料と、各社の公式発表をもとに整理したものです。
先に結論|流出のお知らせが届いたら
- メールの中のリンクは押さない。自分でブックマークや公式アプリから開く
- そのサイトのパスワードを変える
- 同じパスワードを使っているほかのサイトも、全部変える。ここが一番大事
- これから先は、サイトごとに別々のパスワードにする。覚えるのは無理なので、パスワード管理アプリに任せる
流出は「いつか」ではなく、もう起きている
私に届いた2通の中身を、それぞれの会社の公式発表で確かめました(会社名はここでは伏せます)。
- 1通目(通販サイト):数十万件の情報が流出。名前・電話番号・メールアドレスのほか、パスワードは「そのままでは読み取れない形(ハッシュ値)」で流出。住所やクレジットカード情報の流出は確認されていない
- 2通目(ソフトウェアの会社):2,000万件を超えるお客様情報が流出した可能性。項目にはメールアドレスとパスワード、氏名、住所、電話番号、生年月日などが含まれる(人によって項目は違う)。クレジットカード情報は対象外。全会員のパスワードをリセット済み
こうした事故は増えています。東京商工リサーチの調べでは、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は180件、漏えいした人数は約3,063万人分で、前の年の約2倍でした。原因の6割以上が、ウイルス感染や不正アクセスです。
だまそうとするメールも増えています。警察庁のまとめでは、2025年に寄せられたフィッシング(偽のメールやサイトで情報を盗む手口)の報告は約245万件。ネットバンキングの不正送金の被害は約104億円で、その手口の約9割がフィッシングでした。同じ資料には、生成AIを悪用して偽のサイトを本物そっくりに作った事件も載っています。偽物は、これからもっと見分けにくくなると思っておいたほうがいいです。
一番危ないのは「パスワードの使い回し」
流出そのものは、自分では防げません。会社のサーバーが破られたら、こちらにできることはないからです。
でも、流出したあとの被害は、自分で小さくできます。そのカギが、パスワードの使い回しです。
どこかのサイトからメールアドレスとパスワードの組み合わせが漏れると、悪い人はその組み合わせでほかのサイトにも次々とログインを試します。これを「リスト型攻撃」といいます。総務省も、この手口があるのでパスワードを使い回さないようにと呼びかけています。
つまり、同じパスワードをあちこちで使っていると、1つのサイトの流出が、ネット通販・メール・SNSなど、全部の入口の鍵になってしまうのです。
【私の失敗】同じパスワードを使い回して、カードを不正利用された
偉そうに書いていますが、私も昔は使い回していました。
当時はAndroidのスマホで、Googleのパスワード保存と、スプレッドシート(表計算)でパスワードを管理していました。そして中身は、だいたい同じパスワードの使い回しです。
そのころ、クレジットカードの不正利用に何回かあっています。
私は買い物をよくAmazonでするのですが、Amazonから来たように見えるメールのリンクを、気づかずに押してしまったことがありました。送り主のアドレスをよく見ると、Amazonの名前の一部が少しだけ違う、というものです。
後日、カード会社から電話がかかってきました。「海外で○○円の利用が連続してあるのですが、お心当たりはありますか」。もちろん、ありません。
今思えば、セキュリティの知識がまったくありませんでした。だからこそ、同じような人に伝えたいのです。
流出のお知らせが届いたら、やること
1. メールの中のリンクは押さない
流出が起きると、その会社を名乗る偽のメールが出回ることがあります。今回の2社も、公式発表の中で、偽のメールやSMS、電話に注意するよう呼びかけています。
パスワードを変えるときは、メールのリンクからではなく、いつも使っているブックマークや公式アプリからサイトを開いてください。フィッシング対策協議会も、同じことをすすめています。
2. そのサイトのパスワードを変える
2通目の会社のように、会社の側でパスワードをリセットしている場合もあります。お知らせの内容を確かめて、新しいパスワードを設定してください。
3. 同じパスワードのほかのサイトも、全部変える
ここを忘れる人が多いと思います。流出したサイトと同じパスワードを使っているサイトは、全部変えてください。2社とも、お知らせの中でこのことをお願いしています。

対策|覚えるのをやめて、パスワード管理アプリに任せる
「サイトごとに別々の、長くて複雑なパスワードにしましょう」。正しいのですが、人間には覚えられません。
そこで使うのが、パスワード管理アプリです。総務省のサイトにも、パスワードを覚える必要のないパスワード管理ツールを使うことが推奨される、と書かれています。
私が使っているのは1Passwordです。使い始めたきっかけは、YouTubeの「リベ大(リベラルアーツ大学)」で、学長がおすすめしていたことでした。
使ってみて、便利なところ
- Macでもスマホでも、同じパスワードが使える
- 指紋でロックを解除して、ログイン画面に自動で入力してくれる
- 新しく登録するサイトでは、長くて複雑なパスワードを作ってくれる
- 何より、もうパスワードを覚えておかなくていい
覚えるのは、1Passwordを開くための「マスターパスワード」1つだけです。
私が「お金を払う」ほうを選んだ理由
ここからは、私の考えです。
パスワードは、銀行やカード、メールなど、生活の全部の入口の鍵です。その一番大事なものを預ける場所には、お金をかけたい。私はそう思っています。お金を払うのは、守る力を買うことだと思っています。
有料のサービスは、利用者のお金で、守りの対策をずっと更新し続けられるのではないか。これは私の主観ですが、無料のアプリに一番大事なパスワードを預けるのは、個人的には怖いと感じています。
1Passwordは、マスターパスワードと、自分の端末の中で作られる「Secret Key」という2つを組み合わせて、データに鍵をかける仕組みです。1Passwordの会社自身も、利用者のデータの中身を見ることはできない、と説明しています。
【正直に書きます】有料でも、絶対に安全ではない
おすすめする以上、不利なことも書いておきます。
お金がかかる
無料ではありません。買い方と値段は、すぐ下にまとめました。
パスワード管理サービスそのものが狙われたこともある
2022年、別のパスワード管理サービスLastPass(ラストパス)が不正アクセスを受け、利用者の保管データのバックアップが盗まれました。LastPassにも有料プランがあります。つまり、有料だから絶対に安全、とは言えません。
ただ、LastPassの発表では、盗まれたデータのうちIDやパスワードの部分は暗号化されていて、利用者それぞれのマスターパスワードがなければ読めないとされています(サイトのURLなど、暗号化されていなかった部分もありました)。だからこそ、マスターパスワードは、ほかのどこにも使っていない、長いものにしてください。
1Password自身も2023年に、社内で使っている管理システムで不審な動きを見つけたと発表しています。このときは、調べた結果、利用者のデータへのアクセスはなかったと公表しています。何かあったときに、きちんと発表する会社かどうかも、選ぶときの目安になると思います。
マスターパスワードを忘れると、戻せない
1Passwordの会社も中身を見られない、ということは、マスターパスワードとSecret Keyをなくすと、会社に頼んでも戻せないということです。登録したときに作られる「Emergency Kit(緊急キット)」は、印刷して大事にしまっておいてください。
無料の選択肢もある
公平に書くと、Googleのパスワードマネージャー(ChromeやAndroidに付いている機能)や、Bitwardenのように、無料で使えるパスワード管理もあります。私は有料を選びましたが、どれを使うにしても、使い回しを続けるよりずっといいです。一番いけないのは、何もしないことです。
買い方|本家(公式・App Store)か、ソースネクストの3年版か
本家(1Password公式サイト)で買う
本家から直接買いたい人は、1Passwordの公式サイトから申し込みます。個人プランは月3.99ドル(年払い)で、料金はドル払いです。2026年10月時点では、新しく始める人は最初の1年が割引になっています。14日間の無料お試しがあり、お試しにカードの登録はいりません。まず試してみたい人は、こちらからが手軽です。
iPhoneの人は、App Storeから1Passwordのアプリを入れて、アプリの中で申し込むこともできます。アプリ自体は無料で入れられて、14日間のお試しのあと、アプリの中で有料プランを選ぶ形です(支払いはApple IDから)。
ソースネクストの3年版を買う(Amazonでも売っています)
私が前に買ったのは、こちらです。ソフト会社のソースネクストが、1Passwordの3年分をまとめて円で売っています。Amazonでも買えます。ソースネクストの公式ページでは、通常価格が1人用 17,980円・5人用 27,980円(3年分)で、時期によってはセールもあります(2026年10月時点)。中身は本家で買う1Passwordと同じだと説明されています。
ただし、2つ注意があります。
- ソースネクストの会員登録が必要です。登録するときのパスワードも、もちろんほかで使っていないものにしてください(1Passwordに作ってもらえば簡単です)
- 使い始めるまでの手順に少しクセがあります。購入後にソースネクストのマイページでコードを確認し、1Password側で入力する流れです。すでに本家で使っている人が切り替える場合は、1Passwordのサポートとメールでやりとりする手順もあります
「本家のほうが安心」という人は公式サイトから、「円でまとめて払いたい」という人は3年版から。どちらを選んでも、1Passwordの中身は同じです。

家族にもすすめたい|ファミリープラン
パスワードの使い回しは、家族も同じだと思います。1Passwordにはファミリープラン(5人まで)があり、家族それぞれが自分の保管庫を持てて、必要なものだけ共有することもできます。本家なら月5.99ドル(年払い)、ソースネクストなら5人用の3年版があります。
私は今、個人プランで使っていますが、家族プランに切り替える予定です。契約の変更には少しクセがあるようなので、実際に切り替えるときに画面を撮りながら、手順を別の記事にまとめます。1Passwordの使い方も、次の記事で書く予定です。
まとめ|流出は防げない。でも、被害は小さくできる
- 個人情報の流出は増えている。自分のところにも、お知らせが届く時代
- お知らせのメールのリンクは押さない。公式サイトから開く
- 一番危ないのは使い回し。同じパスワードのサイトは全部変える
- 覚えるのはやめて、パスワード管理アプリに任せる
- 有料でも絶対ではない。マスターパスワードは長く、ほかで使わない
「お詫びとお知らせ」のメールが届いたら、それはパスワードを見直すいい機会です。私も、2通のメールをきっかけにこの記事を書きました。
参考:東京商工リサーチ「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」(2026年1月30日)、警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」、総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」、フィッシング対策協議会「フィッシング対策ガイドライン 2026年度版」、LastPass「Notice of Recent Security Incident」(2022年12月22日)、1Password「Okta incident」(2023年10月)、ソースネクスト「1Password 3年版」(2026年10月時点)、1Password「料金」(2026年10月時点)。