年末の大掃除。床や窓は拭いても、壁紙(クロス)は「どう掃除していいか分からない」「こすって傷めたら怖い」と、後回しになりがちです。
私は本業でクロス(壁紙)と塗装の仕事をしています。毎日のように壁紙を張っていて、張り替えの現場では、汚れた壁紙や、掃除で傷んでしまった壁紙もたくさん見てきました。
この記事では、職人がすすめる壁紙の汚れの落とし方と、やってしまいがちな失敗を書きます。道具は100円ショップでそろいます。
先に結論|壁紙の掃除は「やさしく・薄く・すぐ拭き取る」
- いきなり濡らさない。まずホコリを払う
- 水ぶき → 薄めた中性洗剤 → 洗剤を水ぶきで取る → 乾ぶきの順で、軽い方から
- こすりすぎない。漂白剤・強い洗剤・シンナーは使わない
- 継ぎ目(ジョイント)に水をためない。ぬれたらすぐ拭く
- ついた汚れは早めに拭く。染み込んでしまうと、掃除では落ちなくなる
まず確認|家の壁紙は、ほとんどが「ビニールクロス」
今の住宅の壁紙は、ほとんどがビニールクロスです。表面がビニールなので、水ぶきや薄めた中性洗剤で掃除できます。
ただし、布(織物)や紙・和紙の壁紙は別です。水や洗剤がシミになるので、乾いたやわらかい布でやさしく拭く程度にします。壁紙メーカーのサンゲツも、織物の壁紙は水ぶきや洗剤を使わないよう案内しています。
見分けがつかないときは、家具の裏など目立たない所に少しだけ水をつけてみてください。水をはじけばビニールクロス、すっと染み込むなら布や紙の壁紙です。
【職人の現場】汚れやすいのは、この4つ
現場で張り替えのときに見ていると、汚れている場所はだいたい決まっています。
1. 手あか|スイッチ・ドアのまわり
毎日さわる所は、手の皮脂で黒ずみます。電気のスイッチのまわり、ドアノブの横、廊下の角などです。
2. キッチンの油
大掃除で壁紙を拭く場所で、いちばん多いのはキッチンだと思います。コンロのまわりは、料理の油がはねたり、油を含んだ湯気が当たったりして、ベタベタになります。
3. トイレのハネ
便器のまわりの壁の下の方は、目に見えないハネがついています。気づかないうちに黄ばんでいることもあります。
4. ホコリ
見落としやすいのがホコリです。壁紙の表面には細かい凹凸があり、そこにホコリがたまります。サンゲツの資料によると、ホコリは静電気で壁にくっつく性質があり、冷蔵庫・テレビ・電子レンジなどの家電の近くや、エアコン・換気扇の風が当たる所は特に汚れやすいそうです。ホコリが湿気を吸うと、カビの原因にもなります。
用意するもの|100円ショップでそろう

- マイクロファイバーのタオル(2〜3枚。水ぶき用・洗剤用・乾ぶき用)
- やわらかい毛のブラシ(ホコリ払い・凹凸の汚れ)
- 少し硬めのブラシ・歯ブラシ(凹凸の溝に入った汚れ)
- 台所用の中性洗剤(水で薄めて使う)
- ハタキやハンディモップ
- バケツ(水と、薄めた洗剤用)
ブラシは、100円ショップに行けばいろいろな硬さのものがあります。まずはやわらかい方から使ってください。
落とし方の手順|軽い方から順番に

手順1|ホコリを払う(いきなり濡らさない)
ハタキややわらかいブラシで、上から下へホコリを落とします。ホコリが残ったまま水ぶきすると、ホコリが泥のようにのびて、かえって汚れが広がります。
手順2|かたく絞ったタオルで水ぶき
タオルはかたく絞って、汚れを押さえて吸い取るように拭きます。ゴシゴシこする必要はありません。軽い手あかやホコリの汚れなら、これで落ちることも多いです。
手順3|落ちなければ、薄めた中性洗剤
水ぶきで落ちない汚れは、台所用の中性洗剤を水で薄めて、タオルに含ませて拭きます。壁に直接スプレーするより、タオルに含ませる方が、水が垂れて継ぎ目に入るのを防げます。
壁紙の凹凸の溝に入った汚れは、ブラシや歯ブラシに洗剤をつけて、くるくるとやさしくかき出します。
手順4|洗剤を水ぶきで取る
ここを飛ばす人が多いのですが、大事な手順です。サンゲツの資料にも、壁紙に残った洗剤は変色の原因になるので、真水かぬるま湯できれいに拭き取るよう書かれています。
手順5|乾ぶきで仕上げる
最後に乾いたタオルで、水分を残さないように拭きます。特に継ぎ目のまわりはしっかり乾かしてください。
メラミンスポンジは「最後の手段」
それでも落ちない汚れに、メラミンスポンジを使う方法もあります。ただし、メラミンスポンジは表面を細かく削って汚れを落とす道具です。サンゲツの資料では、一般的なビニールクロスに研磨剤は使わないようにと書かれています。
使うなら、目立たない所で試してから、なでる程度に軽く。表面のツヤが変わったり、凹凸がつぶれたりして、汚れより目立ってしまうことがあります。
場所ごとのコツ
キッチンの油汚れ
油は、冷えると固まって落ちにくくなります。ぬるま湯で薄めた中性洗剤を使うと落ちやすいです。一度で落とそうとせず、洗剤で拭く→水ぶき、を何回かに分けてください。
スイッチ・ドアまわりの手あか
皮脂の汚れなので、薄めた中性洗剤がよく効きます。スイッチのプレートに水が入らないよう、タオルはかたく絞ってください。
トイレのハネ
水ぶきと薄めた中性洗剤で拭きます。除菌したいときは消毒用アルコールも使えますが、サンゲツの資料では、アルコールなどで除菌したあとは拭き残しがないように拭き取るよう案内されています(残ると変色のおそれがあります)。初めて使うときは目立たない所で試してください。
カビ
カビが表面だけなら、早めに消毒用アルコールで拭き取るのが効果的です(これも目立たない所で試してから)。壁紙の裏まで広がっているときや、広い範囲に出ているときは、掃除では落とせません。結露が原因のカビについては、こちらに詳しく書きました。
▶️ 結露対策は「拭く」だけでは終わりません|クロス職人が壁を剥がして見てきたこと
【やってはいけない】職人が見てきた失敗
こすりすぎる
いちばん多い失敗です。強くこすると、壁紙の表面がけば立ったり、凹凸がつぶれたりします。一度つぶれた凹凸は元に戻りません。汚れは落ちても、そこだけテカテカして目立つことがあります。
漂白剤を使う
特に色や柄の入った壁紙は、漂白剤で色が抜けてしまうことがあります。サンゲツの資料でも、漂白剤・研磨剤・有機溶剤(シンナーなど)は使わないよう書かれています。濃い色の壁紙は、こすりすぎたり、ぬれた物を押し当てたりするだけでも色が落ちることがあるそうです。
継ぎ目(ジョイント)に水をかける
壁紙は、幅92cmほどのものを何枚も並べて張っています。そのつなぎ目(ジョイント)に水がたくさんかかると、そこから口が開いてはがれてくることがあります。水が垂れたら、すぐ拭くことを心がけてください。
すき間が開いてしまったら|ジョイントコークで埋める
継ぎ目(ジョイント)に髪の毛くらいの細いすき間が開いてしまったら、ジョイントコーク(コークボンド)で埋められます。ホームセンターで売っているので、自分の家の壁紙の色に近いものを選んでください。
使うときは、ノズルの口を小さく、斜めに切るのがコツです。画鋲(がびょう)の穴なども、同じように埋められます。
掃除では戻らない汚れもある|張り替えの目安
正直に書くと、掃除で新品のようには戻らない汚れもあります。
- キッチンの油が染み込んで、拭いても落ちなくなった
- タバコの煙で全体が黄ばんでいる
- カビが壁紙の裏まで広がっている
- はがれてから時間がたって、壁紙が硬くなっている
サンゲツの資料でも、タバコの煙やキッチンの油煙は壁紙を黄色く変え、汚れが取れなくなることがあるとしています。また、使い方にもよりますが、5〜10年を目安に張り替えをすすめています。
だからこそ、ついた汚れは早めに拭くのが鉄則です。長いあいだにたまった汚れほど落ちにくくなります。年に一度の大掃除だけでなく、キッチンの壁は料理のあとにさっと拭くだけでも、ずいぶん違います。
賃貸の人へ|退去の前に、あわててこすらない
賃貸に住んでいる人は、退去の前に壁紙をきれいにしておきたいと思うかもしれません。ふだんの掃除はもちろん大丈夫です。
ただ、落ちない汚れを無理にこすったり、漂白剤で色を抜いたりすると、汚れより目立つ傷みになることがあります。落ちない汚れは無理をしないでください。
何が借りた人の負担になるのかは、こちらにまとめています。
▶️ 退去時のクロス代、全部払う必要はありません|張り替えている職人が教える原状回復の線引き
よくある質問
Q. ふだんの手入れは、何をすればいいですか?
A. ハタキや乾いた布で、ときどきホコリを払うだけで十分です。キッチンの壁は、油がはねたらその日のうちに拭く。それだけで、大掃除がぐっと楽になります。
Q. 壁紙の継ぎ目が少しはがれてきました。
A. 少しだけなら、サンゲツの資料では、ゴミやホコリを取ってから、壁紙の裏に文具用ののりや木工用ボンドをはみ出さないように塗り、しっかり押さえる方法が紹介されています。はがれてから時間がたったものや、硬くなったものは直すのが難しいので、張り替えを考えてください。
Q. セロハンテープで飾りを貼ってもいいですか?
A. おすすめしません。テープののりが壁紙に移って、変色や汚れの原因になります。はがすときに壁紙が破れることもあります。
まとめ|やさしく、薄く、すぐ拭き取る
- まずホコリを払う。いきなり濡らさない
- 水ぶき → 薄めた中性洗剤 → 水ぶき → 乾ぶき
- こすりすぎない。漂白剤・強い洗剤・シンナーは使わない。メラミンスポンジは最後の手段
- 継ぎ目に水をためない。ぬれたらすぐ拭く
- ついた汚れは早めに拭く。染み込んだら張り替えも考える
壁紙は、部屋の中でいちばん面積の大きい「顔」です。年末にきれいにしておくと、部屋全体が明るく見えますよ。
参考:株式会社サンゲツ「壁紙のメンテナンス(一般ビニル壁紙)」、「壁紙のお手入れ方法」(いずれも2026年11月時点)。